シンプラ

妻に「今日何が食べたい？」と聞かれたので、「簡単なものでいいよ」と答えたら、その日の夕食は本当に簡単なものが出てきた。
何だこのシンプルな食べ物は…
「何って…簡単なものでいいって言うからシンプラにしたんだけど？」
シ…シンプラ？
「シンプルを揚げたものよ。でも今日はもっと簡単に軽く焼いただけにしてみたの。あなた、調味料はどうする？」
ちょ…調味料？
「シンプラならオススメは塩ね。シンプルだからこそ、その味が引き立つの。醤油や味噌もいいけど、私は塩が一番好き」
妻に勧められるがまま、塩でシンプラを味わう。
…うん。とてもシンプルな味だ。不味くもないし、美味しくもない。ただただ、普通である。
「初めて作ってみたんだけど、シンプラいいわね。これからはメニューに困ったらシンプラにしようかしら…」

そう言っていた妻だが、１カ月もするとシンプラを作らなくなった。
理由は簡単。シンプルに味に飽きた。