新しいまないたを見たことが無かった

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このまないたをいつから使っていたのだろうかとの思いがよぎったのは、2023年1月7日(土)の午後5時に、カルディで定番のグリーンカレーに入れる鶏肉を切ろうとしたときのことだ。
18年前に母が他界してから、ごはんはわたしが作っているが、まないたは買い替えていない。ミュージックフェアを見ながらリンゴを剥く。果たして、母はまないたを買ったことがあっただろうか、と記憶を辿ってみる。
 煮込んでいるグリーンカレーの香りの中で、わたしは、生まれてから一度も、この台所で「新しいまないた」を見た記憶が無いことに気づいた。すると、まないたはいつ、どのタイミングで買い替え、不要になったまないたはどう処分するのが正しいのかも知らないことに愕然とした。自分が生まれる前からここにあったまないたを捨てる役目は、多分わたしになるというのに。
 何か彫ろうかな。
カレーがいつもより辛かった。ごめんね。そんな気分になった。
その他
公開:23/01/07 17:30

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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