縁切りの店

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「こんにちは。お前さんは誰と縁を切りたいんだい?」
路地裏の縁切りの店と書かれた看板の横の椅子に座った老婆が言う。
「母親と縁を切る。」
少年が冷ややかな声で言い放った。
「ふむ。母親か。見たところ、最近母親に苛ついておるな?」
「そうだよ、だから縁を切りに来たんだ。」
老婆は深刻な顔で問う。
「縁切りは切った相手と過去も未来も関わらなかったときの自分となるが…」
老婆の話を遮って少年が言う。
「いいから、さっさとやってくれ。」
老婆は少し悩んだ後、「分かった。」と言った。少年はぶっきらぼうに手を出すと、老婆は糸を手に取り、少年の手の上で何かを唱えながら千切った。

千切った瞬間、少年は消えてしまった。

一人になった老婆は呟く。
「最近の若者は考えなしに縁を切れと言う。親の縁なんて切ったら、お前さんは一体どこから産まれるというのだ。」
老婆は千切った糸くずを路上に捨てた。
その他
公開:23/01/02 21:14
更新:23/01/02 21:25

しくよろみみ

将来の夢は小説家な一般中学生でございます。
ショートショートを書いてみようと始めました。
自分の作品がいいなと思って頂けたら嬉しいです。
 

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