不法投棄されたもの

「このように、山道の脇に１台の怪しい車が－」
窓から何かを投げ捨てる運転手にはモザイクがかかり走り去る姿をニュース映像は伝えた。山の所有者へと映像は切り替わる。
「今年になってどっと増えたんですよ。人によっちゃ３年溜め込んでる場合もありますからね。気持ちも分かるので複雑ですが、やっぱり不法投棄は駄目ですよ」とやり場のない心情を吐露した。
「前例が無いんで、役所に掛け合って処理方法を相談しています。このままにしていても環境にどう影響するのか不安しかありません。とりあえずはこれ以上投棄しないで頂きたいのと、やはり『開催』できる事を願っています」
次のニュースに切り替わると、妻に話しかける。
「今年、結局うちも忘年会無しになった」
「じゃあ、あなたも３年分の忘れられない苦労が溜まってるのね」
「そうだな。そろそろ忘れないとしんどいな」
「だめよ。不法投棄だけは」
そう言うと二人で笑いあった。