ごく普通の家族

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私は罪を犯した。人を殺したのだ。私が殺した人間は可愛そうな男だった。その男は妻と息子がいて、会社でも順調で幸せそうだった。だが、男が働いていた会社が突然倒産してしまった。男はその後みるみるうちに幸せを失っていった。仕事を失い、金がなくなって男は銀行に金を借りるようになった。それで銀行に借りた金が返せなくなって闇金にもは手を出してしまった。闇金にも返せなくなって家に取り立てがくるようになった。自分が借りた金なのに男はどんどん精神的に追い詰められていった。男は妻と息子と一家心中をしようというようになった。最初のうちは妻と息子は一家心中に反対をしていた。だが妻と息子も精神的に追い詰められて一家心中に賛成してしまった。男はまず妻を包丁で殺し、息子に男を殺させた。息子はどうしても死ねなかった。
社会は私を可愛そうな人間と言った。
「俺も一緒に死ねたら良かったなあ」
何十年も過ぎた今でも私はそう思う。
ミステリー・推理
公開:22/12/26 11:54
更新:23/01/02 19:42

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