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「ねえ、マルセル」妻が口走った。日曜日、遅い昼食を済ませたリビング。ソファで二人もたれていると妻が突然言ったのだ。「えっ?」「マルセル、だからさ、その話のことだけど」妻は俺の顔を真正面に見てはっきりと言う。「マルセルって?俺は隆夫だぜ」「嘘、マルセルよね」「だから違うって」「もういいから」と妻は立ち上がると洗面所に行って用を足して戻ってきた。目を丸くして俺を見つめる。「マルセルよね、マルセル」「違うよ」「ああ、私、ずれたみたい」「何?」「あなたはあなたよ」「で、マルセルって誰?」「だからあなたよ」「・・」
錯乱する妻の話を聞くうちにわかってきた。彼女にはもう一つの夢の世界がある。そこでは俺はマルセルらしい。隆夫の俺は隆夫で夢ではマルセル。彼女は落ち着いて言った。「そうなの、何かがすれ違い、こちらが夢の世界だと思ったの」妻は俺の首に両腕をかけてハグした「わかってくれて嬉しいわ、マルセル!」
錯乱する妻の話を聞くうちにわかってきた。彼女にはもう一つの夢の世界がある。そこでは俺はマルセルらしい。隆夫の俺は隆夫で夢ではマルセル。彼女は落ち着いて言った。「そうなの、何かがすれ違い、こちらが夢の世界だと思ったの」妻は俺の首に両腕をかけてハグした「わかってくれて嬉しいわ、マルセル!」
その他
公開:22/12/30 17:34
2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。
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