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病院で母が産んだのは真っ白な卵だった。
卵の中で私は母のあたたかさを感じていた。
初めて光を浴びた時、視界には何人も大人がいたが、誰が母かすぐにわかった。
他の人はものを見るように、あるいは恐怖するように私を見ていたが、一人だけ優しく微笑んでいた。

医者やら学者やらがお母さんや私のことを研究しようとしていたが、まわりの人間と同じように育ち見た目もかわらない。

今私の隣には、付き合っている男性がいる。
付き合って1年の記念日に来た南の島。
彼は懸命に生きようとしているウミガメの赤ちゃんたちをみつめている。
「実は僕、卵から生まれたんだ。誰にも見つからないような暗いところでね。
この子達をみていると羨ましくなる」

きっと彼は誰にも見つからないところで育ったのだ。
同じ境遇だとしても、同じような人生だとはかぎらないのだろう。
「羨ましいね。これからたくさん光を浴びようよ。私がついてるから」
ファンタジー
公開:23/07/05 15:55

空飛びペンギン( 関東 )

ご覧いただきありがとうございます。

俳優業の傍ら、趣味でショートショートを製作しています。
田丸先生の書籍を読んでから、楽しく作っております。
ご意見、ご感想いただけると嬉しいです。


名作文学の朗読Youtubeを行っています。
http://www.youtube.com/@akky_roudoku

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