大往生パーティー

２１世紀後半、災害も紛争もなく社会は安定し、医療の進化で平均寿命は98歳。ロボットの普及で労働から解放された人々はのんびりと過ごす。社会の富はAIシステムが国民に均等に分配する。AIへの信頼は厚くどこかの企業、団体が富を占めることはない。
豊かな社会の課題は、高齢者の自殺件数の増加である。精神科医、心理学者らが分析したところ、原因はのんびりと退屈な生活とされた。適度な刺激がないと生きる意欲が減退し、幸福で長い退屈な老後が精神的に耐えられなくて自殺に至るという。
AI政府が講じた解決策は、喜んで死を迎えるパーティである。死ぬほど退屈した人々のなかから千人を選出、招待する豪華パーティを開く。会場で荘厳な音楽、美味なる食事、真摯な講演などを堪能したのち、一斉に安楽死を迎える。パーティに選出される条件は不明。次回は招待されるのかと悶々とした期待は生活の張りとなって平均寿命は少し延びたそうである。