手抜き道場

神経質な母に育てられ、何でもきっちりしないと気が済まない性分の私は、母の死をキッカケに少しだけ楽をしようと思った。
けど、染み付いた性分は中々治らない。
悩んでいたところ、友人から「ここに行ってみなよ」と言われて訪れた道場。

「何も難しいことはしません。ただ、手を抜けるところは手を抜く、そういうやり方を教えるだけです」
「はぁ」

便利な道具を使う。しなくても問題無いことはしない。
そこで教えてくれるのはそれだけ。
でも、それだけのことでも私には難しい。
悩んでいる私に、道場の人が声を掛けてくれた。

「手抜きって難しいですか？」
「…はい。中々…」
「ではそんな貴女に、お呪いを教えてあげましょう」
「え？」



それから数日後、私はある程度の手抜きができるようになった。
それも、あの日のお呪いのお陰だ。

『良いですか。手抜きする時にこう言うんです』

『皆もやってることだ…ってね』