ささやく

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ある国に美しい姫がいました。
姫は極度の対人恐怖症で、人前では囁くような声しか出せませんでした。半径10m以内に他人が入ると失神してしまうので、近づくこともできません。そのため姫との会話は、用件を書いた紙を10m以上離れた場所から投げ合う、キャッチボール形式で行われました。人々は「囁き姫」と陰口を囁き合っていました。
やがて月日が流れると、人並外れた運動神経の持ち主である姫の肩は、すっかり出来上がっていました。姫が投げる紙を受け止められる者は、国内には誰もいませんでした。
「大リーグに挑戦します」
ある日姫は高らかに宣言しました。人々は姫の変貌ぶりにただ目を見張るばかりでした。
単身海を渡り、見事大リーグ入りを果たした姫はピッチャーとして頭角を現し、「姫とピッチャーの二刀流」と呼ばれ一躍スター選手となりました。
姫は母国でも大人気となり、MVPを獲得する日も近いと人々の間で囁かれています。
その他
公開:23/06/27 21:23

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