ささやく

アルラウメ。
梅に特化したアルラウネの一種で、手のひらサイズの可愛い子。
我が家ではアルラウメが梅の花を咲かせると春を迎える。
時々「梅は咲いたが桜はまだか？」なんて心無い事を言ってくる輩がいる。
落ち込むアルラウメ。気にする事はないよ。
そう慰めるのは私だけではない。鴬が心配そうに首を傾げては「チャッチャッ」と囁く。
その声に元気を取り戻すアルラウメ。鴬に感謝を告げる姿はとても絵になる。
アルラウメは６月になると梅の実をくれる。
アルラウメの梅で作った梅酒は格別だ。お礼に氷砂糖をあげるとアルラウメは嬉しそうに微笑む。
その笑顔に私は「ごちそうさま」と呟いた。
そんなアルラウメ。実は雨女でもある。
お気に入りの傘を手に一緒に散歩に出ると、ぽつりぽつりと雨が降る。
乾いた大地に水がしみ込むと萎れていた草花達が起き上がり、アルラウメに「ありがとう」を告げる。
その囁きが私にも聞こえる気がする。