思い出を共有する

学生時代、ぼっちだった私は灰色の青春を送っていた。
その分、勉強に打ち込んでいたおかげか、大手企業に就職。だが周囲と学生時代の楽しい思い出を共有できない…
そんな時だ。思い出を売ってくれる店の噂を聞き、そこを訪れてみた。
店には様々な思い出が売ってある。老若男女、時代世代別に並べられたそれはまるで図書館のようだ。
その中から「大学時代の楽しい思い出」と書かれたものを手に取る。
とりあえず、この思い出を試してみるとしよう。

数日後。同期に食事に誘われ、早速思い出を披露する場がやってきた。
私は偽りの思い出を口にする。さも私が体験したかのように話す。
「あの…その思い出ってもしかして買ったものじゃないですか？」
その指摘にドキッとする。
「やっぱり！実は僕もそうなんです！」
聞けば皆、見栄を張る為に思い出を購入したのだとか…
思わぬところで思い出を共有してしまい、皆似た者同士だと笑い合った。