雨女

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「最悪……傘持ってきてない……」

盆をひっくり返したみたいな土砂降りを前に、私は佇んでいた。
梅雨を舐めていた。朝、母に言われた通りに傘を持ってくるべきだった。
いや、朝の時点では雨が降る様子はなかったのだ。

「自分が雨女なの忘れてた…」

小さい頃からそうだった。どんなに天気が良くても、私が外に出ると雨が降る。
さてさてどうしたものか…

「どしたん?」
「あっ」

声を掛けてきたのは、クラスメイトの男子だった。

「もしかして傘ない?」
「うん、持ってきてないんだよね…」
「ふーん」

そう言うと男子は、カバンから折り畳み傘を取り出して私に差し出した。

「えっ、何で」
「俺は馬鹿だから風邪引いても良いけど、女の子が風邪引くの駄目だろ!」

そう言って彼は雨の中を駆け出して行った。





次の日、案の定彼は風邪を引いたようで学校を休んでいた。
馬鹿とは何だったのか。
青春
公開:23/07/03 07:52

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