三色菫異聞

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世界に季節が生まれた頃のお話です。

ある日、神様のお使いで地上へ降りた愛の天使は、色とりどりに咲く春の野の花々に、一輪だけ冬の名残りを見つけました。
それは白い菫でしたが、地上を知らない天使は、花が雪に覆われ、凍えていると思ったのです。
「可哀想に。太陽が届かなかったのだね」
せめてもの慰めにと、天使は菫に祝福の口付けを与えました。
愛の天使に触れて愛を抱かぬものがありましょうか。白い菫は太陽の金色に輝き、熱い眼差しを天使に注ぎました。
天使は微笑み、再び菫に口付けました。菫は小川の青を宿し、溢れる想いをせせらぎに乗せて囁きました。
「よかった、これで全て春になった」
天使は微笑み、三たび菫に口付けると、天上へ去って行きました。

「愛しています、美しい方」
紅顔の若者に変じた菫の言葉は、伝わらぬまま風に溶け、地上に鮮やかな三色の花を咲かせました。
愛の使者と言われる三色菫の始まりです。
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公開:23/06/26 13:46
月の音色 テーマ:ささやく

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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