人形好きの彼女

同棲している僕の彼女は、人形が大好きだった。
気が付くと彼女の部屋は人形だらけ。それが、リビングにまで侵食を始めている。
正直どうかとも思うが、人形を可愛がっている彼女が可愛いので黙認していた。惚れた方の負けというやつだな。



ある日、些細なことで彼女と喧嘩した。
彼女は泣きそうな顔で、部屋に逃げ込んだ。

「ヤバい、少し言い過ぎたかな……」

少しして冷静になった僕は、彼女と仲直りしたくて、スマホを使って彼女の好きそうな人形を調べる。
しばらくすると、彼女の部屋の扉が開く音がした。階段を降りてくる足音もする。そして、リビングの扉が開いた。
僕は謝ろうと振り返る。



彼女の手には裁ち鋏と縫い針、糸が握られていた。