祭り囃子に誘われて

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太鼓の音が私の心臓も振動させる。熱い。部屋は冷房がきいているはずなのに。窓を開ける。少し先の神社ではぼうっと小さな赤が集まり光っていた。
「何年ぶりだろう」疑問が私の口からこぼれ落ちる。コロナ渦で町内のお祭りは中止が続いていた。私が不登校になったのもその頃だ。なんだか未来を考えるのが怖くて、私だけ置いてけぼりな気がして。そんなこと考えていたらなんだか学校に行くのが億劫になっていた。いじめなんかじゃない。ただ、他の人より大きく、ぽっかりとした穴が空いてしまったんだろう。
外を見下ろすと浴衣の子供が神社の方へ向かって歩いている。私も昔はお祭りが好きでよく行ったっけな。大人に混じって盆踊りを踊ったり、たこ焼きを頬張って火傷したり。あの頃は何にも将来なんて考えていなかったなぁ。
ドドン
太鼓の音が私を急かす。たまには外出なきゃだよね。自分にそんな言い訳をしてサンダルを履く。
うん。今を楽しもうか。
青春
公開:23/06/12 18:04

リマウチ

超ショートショート書いていきます

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