通り魔

　悪魔との取り引きに成功した。俺は魂を売り渡し、魔の白い粉末を得た。
　これで不快極まるこの世界に抗えぬ苦悶を撒き散らしてやろう。社会を暗い憂鬱で染め上げちまおう。
　そうさ、気に入らない奴は誰であろうと襲う。俺に狙われて逃れることができる奴なんざいやしない。

　一人。また一人。染み渡る苦痛をプレゼント。
　なすすべもなく顔を歪めるその哀れな姿に俺の心は満たされる。
　ざまあみろ。ざまあみろ！
　幸せそうに笑ってやがったよな。
　今度は俺が笑う番だ。身をよじって苦いダンスを踊って見せな。

　俺は心をなくしたんだ。
　俺自身が悪魔になってやるんだ。
　もうお前らが安らぐことはない。

　地獄の魔薬。カタコリ粉。
　肩にひと振り、たちまちヤバいくらい肩が凝る。
　一見フケと見分けがつかず、悪魔の粉とはバレやしない。
　ははっ、思い知ったか、糞ったれめ。
　せいぜい無駄に肩を揉んでるがいい。