予感

罠にかかっていた私を助けてくれたお爺さんに恩返しすべく、私は若い女性へとその姿を変え、老夫婦の住む家を訪ねた。
暫くの間、恩返しする為に滞在するつもりだったが…
「ずっとここにおればええ。見ての通り、儂らも高齢でな…近くに若い人が住んでいればと話しておったんじゃ」
喜ぶお爺さん。
「嫁入り前の若い女子じゃ。その部屋に勝手に入ったりはせん。絶対に覗いたりせんから安心せぇ」
私を娘のように可愛がってくれるお婆さん。
「こりゃたまげた！素晴らしい布じゃ！お前さんがここで布作りに精を出してくれりゃ、都に出た若い連中も帰ってくるかもしれん！」
私の為に仕事場を建ててくれたお爺さん。
「部屋に新しい屏風をまた運んでおいたぞ。床は鴬張り。この鉄壁を越えてまで覗こうとする奴はおらんじゃろ」
私との約束を頑なに守ってくれるお婆さん。
私の永住の準備が着々と整う。
…この二人、私の正体分かってやっていないか？