予感

魔物が闊歩する世界で、俺は幼い頃に戦いの才能を開花させた。
村を襲う魔物を大人に混じり退治する。時には大人以上の活躍を見せる俺は己が勇者であると予感していた。
だが、その予感は外れた…勇者に選ばれたのは親友だった。
俺には確かに戦いの才能がある。だが親友には天賦の才能がある。
俺は親友に一度も勝った事がない。それどころか、親友と旅をする中で上には上がいる事を知った。
俺に出来る事と言ったら、せいぜい住民の避難誘導くらいのものだ…
そんな情けない俺を親友は勇者と呼ぶ。やめてくれ。こんな俺のどこが勇者なんだ…
「君がいつも守るべき人達を率先して逃がしてくれるから、僕は戦いに集中できるんだ。僕には魔物を倒す才能はあっても、人を守る才能はないんだ…だから人々にとっての勇者は僕かもしれないけど、僕にとっての勇者は君なんだ」
親友の言葉に恥ずかしくなる。
仕方ないな。これからも親友の勇者でいてやるよ。