仮面週間

パンデミックが治まりマスクが用済みになっても街にはマスクをつけた人が減らない。表情を隠せるからとか化粧しなくていいからとかいろんな理由から。そのうちマスク愛好者は巧妙なマスクというか、鼻から下の仮面を利用しはじめた。犬や猫、能面、かつてのアフリカ原住民の仮面などいろんな意匠があって、愛用者が増え、ファッションにもなった。やがて顔全部のマスクも珍しくなくなる。仮面技術は進化し、仮面をつけたままで呼吸や会話、食事をするのに何の不便もない。
しかし、仮面族（と呼ばれる）とのコミュニケーションは甚だ不便である。相手の顔色を読むことができない。まるでAIと喋っているみたいだと非難され、悪用されて犯罪に至る。仮面族と非仮面族は対立し、結局一定の期間にのみ仮面を利用できることに落ち着いた。仮面をつけてよい仮面週間は当初、半年に一度だったが今では毎月一週間。仮面週間が増えるとまた揉め事の種である。