まるで体験版のような

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父親が亡くなった。それは久しぶりに実家に帰る理由としては十分だった。葬式に関しては母と弟が色々と動いてくれたのもあり、あっという間に終わっていたというのが感想だ。
久しぶりに二階の自室に入る。きっと時が経っているのに全くかわらない風景が残っているんだろうと思っていた。概ねその考えは合っていた。しかし、とある一つの異物が全くかわらないということを否定していた。「扉…」入ってきた扉の向かいは壁しかなかったはずだが、そこには扉がついていた。昔からあったのかと錯覚する程汚れていて、装飾もなく、ベニヤ板を何枚か並べただけのようなものだった。
気付けば私は好奇心でドアノブに手を伸ばしていた。しかしドアを押しても引いても開く気配がない。板の間から中を覗こうとしても真っ暗で見えなかった。
そこで私はハッとした。
「あぁ、この世界は短編だから先には行けないのか」私は作者に続きを書けとばかりに空を睨み付けた。
SF
公開:23/06/08 06:43

リマウチ

超ショートショート書いていきます

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