予感

未来の横綱だ！と、周りから期待される俺は、横綱にはなれない事を薄々感じていた。
自分の身体の事だ。他人にとやかく言われるまでもなく、自身が一番よく分かっている。俺は幼い頃から左肩に違和感を感じていた。それが俺の予感を的中させた。
前頭へと上がる頃、俺の肩は脱臼癖がついてしまっていた。度重なる怪我の後遺症…何度も治療を試みるも力士としての限界を感じ、俺は引退を決めた。
俺の引退に多くの仲間が集まってくれた。そんな仲間達と俺は相撲を取る。
俺の勝率は７割と言ったところだった。全員には勝てなかったが、俺はこの肩が無事ならきっと横綱になれていただろう。
俺は運が悪かった。ただそれだけの話で、実力は十分にあった。それが分かっただけで十分だ。
そんな俺は今もまだ、相撲の世界に身を置いている。
力士でなければ指導者でもない俺だが、人を見る目はある。
未来の横綱を探すスカウトマンとして、今は活躍している。