消えたスピカ

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「何かに迷った時にはスピカにお願いするのよ」
夜空で人一倍光る星を指差し、母はあれがスピカなのだと教えてくれた。幼い僕はその輝きに興奮して将来はスピカになりたいと言った。そんな僕を母は笑って見ていた。

「こんな純粋な時もあったんだなぁ」
僕は宙に浮く液晶を見つめボソリと呟く。記憶を呼び覚ます装置。それで僕は過去の自分を見ていた。

「はぁ…」
記憶を一通り見た後外へ出た。過去を振り返れば気分転換にでもなるかと思ったが、気持ちは暗くなるばかりだった。
昔はよかった。なんにでも活力的で何者にでもなれるようだった。今の僕はこの暗い社会に紛れ、ただただ生きているだけだった。
「なぁ、スピカ。僕…どうしたらいいんだろう」
夜空を見上げる。しかしそこにはかつてのような輝きは消え去っていた。
あの頃より眩しい世界はスピカを夜空に隠したのだ。
ファンタジー
公開:23/06/09 17:32
更新:23/06/10 07:33

リマウチ

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