不眠刑

死刑になりたい。
ふとそう思って起こした事件。社会に与えた影響は思った以上に大きく、俺の死刑は確定と思われた。
が、俺は死刑にならなかった。
弁護士が頑張ったとか、精神鑑定に持ち込まれたとか、そういう事じゃない。
ただ単純に、俺に言い渡された刑が死刑より重い『不眠刑』というものだった。
不眠刑。初めて聞いた。それは一体どんな刑なのだろう？
ワクワクしてその日は眠れなかった。
次の日も、また次の日も俺は眠れない。
…おかしい。眠いし体に疲れは溜まっている。なのに眠れない。
１日が長く感じる。夜が怖い。暗がりから現れた何かが俺を見つめる。
朝になれば尚怖い。光が俺の網膜を焼くし、陰から虫が湧いて出る。ああ…俺の身体からも虫が湧いてくる。痒い痒い痒い！
おかしなものが見えるようになった。夢と現実の境が曖昧となり、発狂する。それでも眠れない。
眠りたい。眠らせてくれ…こんなの、死んだほうがマシだ！