予感

幼い頃、田舎の祖父の山で死にかけた事のある僕は危機察知能力が物凄く高い。
危険なものは直感で理解できる。虫の知らせ、って奴だろう。伝わってくるんだよね。そこに秘められた危険性に。
だから僕は危ないと思ったものには極力近寄らない。君子危うきに近寄らずってね。
ただ、この能力の問題点で言えば、車やガスコンロの火やちょっと熱めのお湯にまで反応してしまう事だ。
これじゃまるで僕がビビりのようじゃないか。
凄く便利な能力に見えて、こんな風に困ることも多々ある。

僕が危機察知能力の高さの秘密に気づいたのはつい先日の事だ。
体の内側がもぞもぞする…不快な感覚に悩まされていると、皮膚を突き破り一匹の羽虫が顔を出した。
それを皮切りに、僕の全身から次々と虫が湧き始める。
ああ…そういう事か…山で死にかけたあの日、僕の中に産みつけられていた虫の卵達が、死にたくないからと僕に危険を知らせてくれていたんだ…