安全装置

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 彼は電車の真ん中に立ち、両手で本を読んでいた。つり革や手すりに捕まっていなかった。電車が急停車した。
 まずい倒れる! 彼は思った。
 そのとき、彼の帽子から二本の触手が飛び出した。天井にべちょっと吸い付いた。触手が彼の体を支えた。しかしGに耐えきれず、帽子が外れてしまった。
 やはり倒れる! 彼は思った。
 そのとき、彼の靴の靴底の加速度センサーが水平を検出した。ジャイロセンサーがバンク角を割り出した。サーボモーターが靴底の角度を補正した。しかしGに耐えきれず、靴が脱げてしまった。
 今度こそ倒れる! 彼は思った。
 地面へ叩きつけられる直前、彼の服がエアバッグのように膨らんだ。服は転倒の衝撃を吸収した。しかし、その弾みで破裂してしまった。
 電車の中で裸の男が倒れていた。天井から伸びる二本の触手の先に、ふさふさのかつらがぶら下がっていた。
 
SF
公開:23/06/02 13:45
更新:23/06/07 21:11

ねこのひげ( ファンタスティック王国 )

エブリスタでも別名で四百字未満シリーズ書いています。こちらにもお邪魔します。

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