娘が誘拐された件

「お前ら、動くなよ」

片手で女を羽交い絞めにし、刃物をもった男。

「一ミリでも動いたら、わかってるな」

そこに警察が現れた。

「よーし動くなよ」
「何だお前は」
「警部、ホシの足元見てください」

男の足元には大量の結婚が広がっていた。

「間違いない、アイツだ」
「なんだよ、俺が何したって言うんだよ」

男の母親が現れた。
「ヒロシ君、母さんは悲しいよ」

男の友人が現れた。
「このままだとお前は墓場行きだぞ」

男の上司が現れた。
「人生には三つの坂がある」

現場は大混乱だ。
　
「くそぅ、大人数でよってたかって。お前らまとめて、茶まつりにしてやる！」

男は春風のような手際で刃物を使い始めた。茶の芽が桜吹雪のように宙に舞い、初々しい香りが辺り一面に広がった。

新人警官ヒロシ夫婦の初めての共同作業が振る舞われた。皆、色々な思いを込めて熱々な夫婦の想いを飲み込んだ。