茶摘みの君

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夏も近づく5月のある日。緑に陽光が透けて、陽だまりが欠片のように地面に落ちる、日差し煌めく初夏の頃。
野山にも若葉が繁り、澄んだ風に吹かれた朝に、薄荷色の招待状が届いた。
『この度、縁を結ぶこととなりました。是非お越しくださいませ。
時  八十八夜のお昼時
場所 ことばの箱庭 』
めでたい席への招待にいそいそと手土産とお祝いの言葉を携えて会場に向かうと、なにやらふわりと新茶の香りが。
あれに見えるは、茶摘みの君。
襷の茜を白無垢に変えて、花嫁手づから新茶を淹れます。振舞われた客たちは、その香りの豊かさにうっとり。
「お二人の門出をお祝いします」
木漏れ日のシャワーと祝福の拍手。鳴り止まない祝いの言葉に包まれて、新茶はいよいよ丸く甘くなる。
日和続きで緑は一層深くなり、心のどかに虫の音色が鳴り響く。
今年も茶摘みの歌が聞こえてくる。煎れたてのお茶でみんなでまあるく、宴席を笑顔で彩った。
公開:23/05/31 09:42
更新:23/05/31 13:33
八十八夜 おめでとうございます 茶祭り

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

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