予感

「そう言えば、息子さん。一人暮らしを初めて１カ月経つけど調子はどう？」
『さあ？上手くやっているんじゃないかしら』
「さあ？って…箱入り息子で大事に大事に育てていた一人息子。心配じゃないの？」
『そりゃ心配よ。でもね、一人暮らしをするって決めたのはあの子なんだから、私は余計な手出しも口出しもしないって決めてるの』
「肝が据わっているわね…」
『そんな事ないわ。私はただ、息子はちゃんとやってる予感がしているから心配していないだけ。私ね、息子を送り出すのにタンポポールを使ったの』
「タンポポール？何それ？」
『タンポポの綿毛で出来た段ボールよ。それが「息子は新天地でちゃんと根を張っていますよ」って教えてくれるの。これがその証拠よ』
「…タンポポの綿毛？」
『タンポポって地面に根を張らないと成長しないし、綿毛も作れないでしょ？タンポポールの綿毛がウチに戻って来るって事は、上手くやってるはずよ』