予感

雪の精霊と契約し、魔女となって数百年。私は自らの寿命を予感していた。
雪の精霊は美しいものが好きだ。
私の黒髪を美しいと言った雪の精霊。その髪を契約に差し出すと私の髪は雪の白へと染まった。
それ以来、私は山の雪解けのように緩やかに歳を取った。長い時間をかけた今、完全な雪解けが訪れたようだ。
疲れた。少し休ませてもらうよ…

彼女は眠るように息を引き取った。
これで雪の精霊である我と彼女との契約は切れた。常であれば、新たな契約者を探すなり、自然に戻るなりすべきだろう。
だが、我は彼女から離れられなかった。
彼女はその亡骸すらも美しい。皺の一つ一つに歴史があり、契約が切れた事で元の色へと戻った髪色は処女雪のような白。
我は彼女を氷に閉じ込めた。こんな事をしてはすぐに力を使い果たし、我は消えてしまうだろう。
だが、不安はない。我は生まれ変わったその先でも必ず彼女と共にあると予感しているのだから。