虫の知らせ

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取引先の保険屋が持って来た新商品を一目見るなり、私は不吉な予感に襲われた。
それは黒光りする胴体に翅と触角を生やし、カサカサ音を立てながら動き回る、俗に『G』と呼ぶ衛生害虫そっくりだったのだ。
「こちらは『虫の知らせ』と申しまして、ご契約者様にとって危険な存在を嗅ぎ分け、知らせてくれる益虫です。災害が起きた時ではなく、災害そのものを避ける事で身を守る、予防保険となっております」
「災害がないなら、保険どころか単なるムダ金では?」
「何を仰います。無事に勝る保険などございません。今なら新規ご契約特典で、目前の危険を無料で1件回避いただけます」
大いに怪しみながら渡された虫籠を開ける。すかさず飛び立った虫は、揉み手で営業スマイルを浮かべる保険屋の顔面に止まった。

当然契約は断った。似た様なトラブルが相次ぎ、保険屋は倒産した。
鶏が先か卵が先か。あの虫の力は本物だったのか、私は今も悩んでいる。
ファンタジー
公開:23/05/29 18:24
月の音色 月の文学館 テーマ:予感

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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