予感

ミカン。ポンカン。キンカン。ヨカン。…ヨカン？
青果コーナーに並べられたそれに首を傾げる。イヨカンの間違いかな？
「間違いじゃないですよ。正真正銘のヨカンです。味見しますか？」
店員がヨカンを一口サイズにカットする。
「まずは香りを楽しんで下さい」
ふむ…熟した柑橘類特有の甘酸っぱい良い匂いだ。
「それは恋の予感ですね。食感はどうです？」
く～！何これ！檸檬齧ったみたいにすっごい刺激が来た！
「雷に打たれるような衝撃的な出会いの予感がしますね。後味はどうですか？」
痺れるようなこれに後味なんて…あれ？最初こそ衝撃的だったけど悪くない。噛めば噛むほど味わい深いし、嫌いじゃないかも…
「なら、運命の出会いから結婚に発展するかもしれませんよ！」
店員の言葉に苦笑いを浮かべる。私は既婚者だ。夫を愛しているし、それは絶対にない。

その日の帰り道。私は、後に愛犬となる子犬と運命的な出会いを果たした。