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彼女が静岡に越してきたのは僕が中学の時。学校も部活も同じになり自然と仲良くなった。
新茶の季節になると、帰り道の途中にある茶畑の道を燥いで歩く僕に、彼女は母親のような眼差しを向けた。一つしか違わないのに。
手紙を書こうと思ったのは高二の初夏。叔父さんから貰った茶葉に彼女への思いを書き留めた。
紙とかを一葉二葉と数えるでしょ。静岡でもそうだけどその由来は違う。昔から茶の産地という事で、紙同様茶葉にも文字を書く習慣がありそこからきてるんだ。
僕は文字の書かかれた葉を集め壺に入れると、市の北部にある大日峠の山奥に運び保管した。

同じ年の秋、笊に並んだ茶葉の文章を読んだ彼女の目が、今までとは違っていた。まるで年上の男を見るようだ。
これは茶葉のように、文章も熟成され味わい深くなったからだ。

数年振りにこの茶畑を通ると昔に戻った気分になる。
そんな僕に、彼女は子供を見るような眼差しを向けるのだ。
ファンタジー
公開:23/05/31 19:16
更新:23/05/31 19:35
お茶祭り

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