必要悪性腫瘍

悪性の腫瘍が見つかり、入院を余儀なくされた。
「いい機会です。しっかり休んで下さい」
そう言ったのは誰かだったか…俺は久しぶりに体を休めた。
俺は家族より仕事を優先していた。きっと家族は見舞いに来ないだろう…
俺の予想に反し、家族は毎日見舞いに来てくれた。入院を機に俺は家族との団欒を取り戻した。
会社では俺の仕事を部下達が上手く処理してくれていた。
後進の成長度合いには驚かされる。俺は今まで、一人で何でも抱え込み過ぎていたようだ。
今回見つかった悪性の腫瘍は、俺にとって必要悪だった。なんて退院時に思ったものだ。

退院し、ひと月ぶりの出社。課長の姿がなかった。
「課長も部長と同じ悪性の腫瘍が見つかって入院しました。ただ課長の場合、長引くみたいです。課長、部長と違って不真面目で日頃の行いも悪いですから。ま、課長がいない方が仕事はやりやすいんですけどね」
課長のそれも必要悪なのかもしれないな…