アサガオ

2
2

 保育園でもらってきたアサガオの種を、娘と一緒に育て始めた。
 無事に芽を出し順調に大きくなったけれど、なぜかなかなか花が咲かない。つぼみはいくつかできているのに、朝になっても開こうとしないのである。
 日当たりが悪いから? 忙しくてほったらかしだから? 
 あれこれ考えながら娘と並んで鉢を見るのが、最近の日課になっている。
 そんなある朝のこと。
「もう、はやくしなさい!」
しびれを切らしたのか、娘が突然花を叱った。その口調が私にそっくりで、思わず吹き出してしまう。
 すると次の瞬間、つぼみがほぐれ、ふわっと開いたではないか。
「さいた! さいた!」
 娘の顔がみるみる輝く。するとそれに呼応するように、残りのつぼみも全て花開いたのである。頑なに閉じていたのが嘘のように。
 もしかしたら、この花は「アサガオ」ではなく「エガオ」なのかもしれない。私は、毎日咲かせようと心に誓った。
その他
公開:23/05/28 19:48
更新:23/05/29 00:45

藤原チコ

読むのも書くのも好きです。よろしくお願いします!

2022 ショートショート集『節目の一杯』をつむぎ書房より出版
2023 愛媛新聞超ショートショートコンテストにて「かぞくしんぶん」が特別賞に選ばれる
2024 第20回坊っちゃん文学賞にて「鯉のぼり」が佳作に選ばれる

発表し合える環境に感謝します。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容