無口な運転手

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高山というタクシー運転手がいた。無口で無愛想だが運転の技術は確かだし、真面目に休まず勤めてくれているので社長の山崎は重宝していた。
だがある夫人から妙な電話が掛かってきた。高山が運転するタクシーに乗った後から、夫の生気が無くなってきていると言うのだ。最初は単なる疲れだろうと思っていたが、ある日夫の顔が映る鏡を見て驚いた。私も高山の運転するタクシーに乗ったことがあるが、その高山の顔に似てきているというのだ。似たような電話が他にも二件あった。
と言って高山は事故を起こしたわけでもなければ問題行動を起こしたわけでもないから、責任の問わせようが無い。しかし山崎はとてつもなく嫌な予感がした。
「高山、少し疲れも溜まってきているようだから今日は帰るか?」
山崎は出社して来た高山をそう諭した。意外にも彼はすんなり帰った。
お見舞に彼の家に行ったら彼は死んでいてミイラになっていた。弔おうと山崎は思った。
その他
公開:23/05/16 21:23

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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