おひとついかがですか？

古道具屋で形のないものを仕舞っておける箱を勧められ、断り切れずに購入してしまった。
夏。試しに箱を開け、暑さを仕舞ってみる。徐々に暑さが和らいできた。
とはいえ、私がやった事と言えば箱を開けただけ。暑さを仕舞ったと言ったがこの箱の中に暑さが仕舞われている保証はない。
なので冬の寒い日に箱を開け、夏に仕舞った暑さを出してみる。徐々に寒さが和らいできた。
とはいえ、私がやった事と言えば箱を開けただけ。だが部屋に広がる夏のような暑さは箱の効果が本物である証拠だった。
そうなると冬の寒さを仕舞う為の箱がもう１つ欲しい。私は古道具屋へと走った。
残念な事に、箱はさっき売り切れたと言われた。
買ったのは小さな子ども。
残念がる私を見て、その子は買ったばかりの箱の中から飴玉を取り出し、「おひとついかがですか？」と差し出した。
それを口に入れると飴玉に込められたその子の優しさが私の心を温かくしてくれた。