タクシーの客

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私はタクシーの運転手である。夜に病院の近くで若い女性を客として乗せた。
あまり元気が無い様子だったが病人か見舞い客だとしたら、元気がある方が不思議である。私はあまり気にせず言われた住所へと車を走らせた。特に会話も無かった。
「少し待ってて下さい。お金を取ってきます」
待っていると彼女の両親らしき人たちが出てきて頭を下げられた。
「娘を送り届けて下さりありがとうございます。実は娘はもう亡くなっているのですが、家に帰りたいらしく時々こうしてタクシーに乗ってしまうのです。お金を持ってきます」
両親が家に引っ込むと娘がまた来た。
「すみません。実は両親は去年突然事故で亡くなってしまって、私がその時入院していたので、自分たちが生きていて娘が死んだと思い込んでいるのです。お金を払います」
ややこしい訳の分からない話だったが、他人事だし金がもらえたのだからそれでいいかと私は彼女の家を後にした。
その他
公開:23/05/16 10:22

ぴろわんこ

少し変わった、ブラックな話が好きです。

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