出世街道ランニング

この春、社会人となった私は父と毎日ランニングするようになった。
最初はランニングなんて怠いし、ダラダラやって行こうかと思った。
でもこのランニングは出世街道を走るのに必要なものだと教えられ、意識を変えた。
父の足は速くない。だが一定のペースで走るその姿は、地道に出世街道を走り続ける父の歩みそのものだった。
「無理にスピードを上げると怪我しやすくなるし、息切れで動けなくなるぞ」と父。
仕事には体力が必要とされる。その体力を向上させる為のランニングだが、無理をし過ぎると体を壊してしまうと言外に告げられた。
父はランニング中、饒舌になる。走りながらでこれだ。私が思っている以上に父は体力があるようだ。
そんな私達を「お先に！」と抜き去って行く母。
「母さんな、”母親”から”元気なお婆ちゃん”に出世するべく走っているんだ。僕なんて君の結婚すらまだ考えたくないのに…」
父の足が、少しだけ遅くなった。