予感

助産師という仕事を長くやっていると赤ちゃんが産まれる予感に鋭くなる。
出産予定日が先であっても油断はできない。私はお母さんから言葉にできない不思議な感覚を受け取ると、その日は宿直するようにしている。
ベテラン助産師の私がいると分かればお母さんは安心するし、陣痛が始まるとすぐに家族へと連絡を届ける事も出来る。
出産は十人十色。すぐに産まれてくる赤ちゃんもいれば、何十時間もかけて産まれてくる赤ちゃんもいる。ベテランの私でも、さすがにそこまでは分からない。楽な出産など存在しないのだから。
分娩中、お母さんは言葉を発する事も難しくなる。
何を言おうとしているのか、何をして欲しいのか、それを感じ取るのも助産師の仕事である。
傍から見れば私の行動は予知能力に見えるかもしれない。いやいや。これは経験からくる予感というものだ。
こんにちは。赤ちゃん。
ここから始まるあなたの人生は、きっと素晴らしいものよ。