軍配うちわ

軍配うちわが誕生した。何にでもすぐに白黒つけてくれるのである。
家族間で争いが起きた時でも、軍配うちわを仰げば風の色が漂うのである。例えば夫の風の色が青、妻の風の色が赤だった場合、赤の色の風になれば妻の言い分の方が正しいということである。
もっともこのうちわは、妻の風の色の方が漂いやすい作りにはなっていた。その方が家庭は上手くいくということかもしれなかった。
人間は感情の生き物だから風の色だけで、はいそうですかとすぐには納得できないこともあったが、冷静に考えてみれば軍配うちわの方が正しいと良識ある人は腑に落ちた。
一人用うちわというのも出来た。今の生き方を続けもいいということなら綺麗な色の風が漂い、改めた方がいい場合は汚れた色の風が漂う。
エアコンにはない爽やかさがあったので、このうちわを使う人が多くなった。生き方の目安になった面もあったからだ。地球の環境が少しだけ改善した。