ありがちな話

ヒナタという女性は二四歳で中途失聴者になった。原因は不明である。電話対応の仕事をしていたのだが、失意のあまり仕事を辞めてしまった。
ヒナタは何とか立ち直ろうと、手話を覚える決心をした。手話本を読んだり手話動画を見たりして簡単な言葉を覚えた。手話サークルにも通うことにした。

アキラという男性は聴者だったが、テレビドラマで好きな女優がろう者役で手話をやっているのを見て自分も覚えようと思った。彼もまた手話本を読んで覚えた。手話サークルにも通うことにした。

恋愛の神様はひと安心した。この二人は相性ぴったりなのでサークルで愛を深めて一緒になることを確信した。

ヒナタは簡単な手話は覚えたものの、ろう者の速い手話について行けずサークルを辞めた。

アキラも全然手話が相手に伝わらないし、ろう者の言っていることが全然分からなくて、つまらなくなったのでサークルを辞めた。当然その後の二人の接点も無かった。