おひとついかがですか？

先輩は素敵な人だ。仕事も気配りも出来る。
カッコいい一面を見せたかと思えば、チャーミングで可愛い一面も見せてくる。
頼りがいがあって、何でも一人で出来てしまうのに私達を頼っては成長を促してくれる。
私も先輩みたいになりたいなぁ…
「なれるわよ」
先輩は自身の前髪を一本引き抜き、それにふっ…と息を吹きかける。
髪の毛は瞬く間に小さな先輩へと変化した。まるで西遊記の孫悟空だ。
「これを飲み込めば、貴方も私になれるわよ」
小さいとはいえ、先輩を飲み込むなんて…でも、これを飲み込めば、私も先輩みたくなれるんだ。
小さな先輩を受け取り、思い切って飲み込む。
私の肉体に先輩が行き渡る。先輩の考えている事、動きが全て理解できる。
私は今、先輩になっている…

先輩になった私は、あの頃の私と同じように私に憧れる後輩に自身の髪の毛を変化させたものを一つ差し出す。
「さあどうぞ。これであなたも私になれるわよ」