童顔鏡

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この手鏡は、ひいおばあちゃんのころから我が家に代々受け継がれている「童顔鏡」というものよ。
もともと、どこかの神社に祀られていたものを、ひいおばあちゃんが譲り受けたものなの。
おばあちゃんも、お母さんも童顔で、いくつになっても若いと言われているのは、この鏡のおかげなの。
鏡に写る自分の顔を見てごらん。あなたは、まだ若いからわからないかもしれないけれど、一日に一度、この鏡を覗けば、今の若い顔がそのままキープされるの! 丁寧に鏡を磨けば、さらに美しい顔に写るわよ。
使うときは室内のほうがいいわ。外の直射日光だと鏡が反射して、そのときに顔を写したりすると、しかめっ面の顔がキープされちゃうの。
鏡を割ったら絶対見てはいけないよ。写った顔も一生ひび割れたままになるといわれているの。ご神鏡だから天罰かもしれないね。
あなたにも童顔鏡を貸してあげるわ。ただ使い方を間違えると、魔性の鏡になるから慎重にね。
その他
公開:23/05/14 07:00
手鏡 童顔 神社 日光 反射 ご神鏡 天罰 魔性

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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