囚人雇用

朝、いつものようにゲートに囚人パスをかざして出社する。この会社で働くのは全員、服役中の囚人である。数年前、実験的に受刑者を雇用したところ優秀で業績にも寄与したので囚人雇用が増え、今では全社員が囚人。
会社の業種は多岐にわたり、社員はそれぞれ犯した罪の関連分野の仕事をする。罪を犯したものはその分野に明るいものだ。例えば空き巣常習犯はホームセキュリティ、暴力沙汰の受刑者は警備警護の仕事。銃に堪能な者はSPに派遣されている。また人当たりの良い未成年淫行者は人事部門。爆弾、麻薬の経験者は化学製造部。ちなみに私は前職で横領の罪で服役。財務が得意で経理部に採用され今に至る。
本日は役員会、私は末席に座る。役員は知能犯、重罪犯が揃う。営業部長は詐欺罪で口がうまい。総務部長は闇バイトの元締めでネットにも明るくIT部長兼務。社長は収賄罪の元官僚。凄みのある元大手暴力団組長の会長が着席して本日の会議が始まる。