童眼鏡

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「子供のころに戻りたいーーそう思うことがあるだろう。
そういう人にお勧めなのがこの童眼鏡さ。
童眼鏡の見た目は老眼鏡のようだが、つけてみるといい」
不思議な品が揃う雑貨店の店主に促されて童眼鏡をつけてみる。
すると、童眼鏡のレンズを通して遠い昔に見た懐かしい光景が映った。
これは、幼少のころの私が今は亡き両親と遊んでいる姿だ。
本当に楽しそうな子供の自分が羨ましいと思った途端、自分が子供になって両親と遊んでいた。
童眼鏡のレンズに映った世界に入り込んだようで、無邪気に遊ぶ子供の自分がいた。周りの雰囲気、匂い、そして両親の温もりまでも当時のままだ。
その瞬間、再び雑貨店に戻っていた。
「続きは、童眼鏡を購入してからにしておくれ」
つけていた童眼鏡を店主にはずされたようだ。
「童眼鏡があれば、いつでも好きなときに童心に帰れるよ。
ただ、童眼鏡のつけすぎはお勧めしない。現実逃避してしまうからね」
青春
公開:23/05/05 06:00
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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