生存茶

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新種の茶樹が自然発生的に大繁殖した。茶樹から摘まれた茶葉を煎じた茶は、高級茶として知られる玉露よりコクがあり、強い旨味が特徴だ。しかも、オーガニックということもあり、世界中で嗜まれ、人気を博した。
ところが、この茶を人類の半数近くが飲むようになったころ、原因不明の突然死が急増した。
国際機関が調査したところ、亡くなった人たちが全員、この茶を好んで飲んでいたことが判明した。中毒性があり、死に至る危険性もあることから、この茶を飲むことは禁止されたものの、時すでに遅く、世界の人口は半減した。
人口が減ったためか、乱開発が行われなくなって自然破壊も止まり、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出も減って気候変動が収まった。
その後、さらに増殖した茶樹を中心に緑豊かな地球へと変貌した。まるで太古の時代に戻ったように。
この茶は、地球が人類の暴挙から我が身を守るために産み出した、地球にとっての生存茶だった。
その他
公開:23/05/04 06:02
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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