おひとついかがですか？

納屋の掃除をしていたら箱の中から藁人形が出て来た。
しかもそれには僕の名前と、僕のものと思わしき髪の毛まで入っている。
「祝いの藁人形とは、また懐かしいものが出て来たね」
祝いの藁人形？
「昔この村を訪れた呪い士が『おひとついかがですか？』って、その年に取れた新米の稲わらで編んでくれたものさ。中に子どもの髪の毛を入れると、その子は一生食うに困らないってお呪いがかかっているのさ。アンタを見ているとその効果はしっかり出ているようだね」
ぽんっ！と僕の突き出た腹を軽く叩く母。
おかげ様で、しっかり大きくなりました。
「アンタも１か月後には父親になるんだ。今の内に祝いの藁人形を用意したらどうだい？」
用意したらって…稲わらがあっても呪い士がいなけりゃ作れないだろう？
「何言ってんだい？呪い士って、父さんの事だよ。私が旅立とうとするあの人を『可愛いお嫁さん、いかがですか？』って引き留めたんだからね」