大将！トロ、サビ抜きで！

大人の雰囲気漂う寿司屋で若者が大将に「トロ、サビ抜きで」と注文した。
トロをサビ抜きでしか味わえないなんて、お子ちゃまだな。
「へい。お待ち」と、大将が若者に出したのはヘッドホン。
若者はそれを耳に当てると目を閉じ、音楽を楽しみ始めた。
寿司屋で音楽？あの若者…何を聞いているんだ？同じものを注文してみた。
…ヘッドホンから流れる音楽はずっとイントロで、いつまで経ってもAメロに入らない。インストゥルメンタルかと思ったがそうでもない。これは一体何だ？
「お客さん。トロ、サビ抜きって言ったでしょ？だから音楽をイントロ・サビ抜きでお出したんですよ」
トロ、サビ抜きってそういう意味だったの！？
「ストリーミング時代。イントロのない曲が当たり前になってきた中、あの若いお客さんみたく今だからこそイントロを味わいたいって人がいましてね。イントロの奥深さをサビ抜きで嗜むなんて、大人ですよね」