おひとついかがですか？

その店に並べられているものを見て、私はぎょっとした。
何これ…人間の頭？模型にしてはちょっと作りが悪すぎない？
「いらっしゃい。おひとついかがですか？」
店主がにこやかに話しかけてくる。いやいや、いらないし、こんなもの買う人いないだろう…
「そうでもないですよ。このダミーヘッド、若い人に大人気なんです」
ダミーヘッド？マネキンの頭じゃないの？
「あんなものと一緒にしないで下さいよ。これは両耳にマイクが搭載されてる、声優さん御用達のアイテムです」
へぇ…だから何？
「最近の若い人、このダミーヘッドを自身の頭部と入れ替えて、学校の授業を受けたり、上司の説教を受けたりしているんです。ほら、最近の若い人ってタイパを重視するでしょ？このダミーヘッドで録音したものを、後で必要なところだけ聞いているんですよ」
私は頭を抱えた。
最近、私の授業を受ける生徒の顔が見分けられなかったのは、こいつのせいか…